負けるな!若女将


     お待たせしました。
     若女将たちも二十一世紀を迎え、さらに「お茶目ぶり」にも磨きがかかっているようです。

     まずはそのさわやかで、上品な笑みをたたえた雰囲気に似合わず、
    以外とすっとこどっこいのY若女将からのご報告です。


  宴会場でのご挨拶編

 宴会が立て込み、息を切らしながら館内を右往左往。
 (廊下やエレベーターですれ違う時って、以外と女将の素がかいま見られるものです。)
 だいたい開宴のお時間は重なるもので、パニック状態となり、ついさっきご挨拶を済ま
せた宴会場のふすまを再びガラッ!
 どこかでお会いしたような・・・?と思ってももう遅い。
 口を突いて出た言葉は「どぉぉぉぉぉしても(こののばし具合がポイント!)、もう一度
皆様にお会いしたかったもので・・・(ニッコリ)」でした。


  にっくきゴキブリ編
 
 時間はすでに午後11時を回った頃。
 一日の仕事を無事、無事!終え、そろそろ休もうと思っていたや・さ・き、フロントからの
魔の電話。
 「客室にゴキブリが出て、お客様が怒っています。責任者を呼べと言っています。」です
って。
 (注:当館の名誉のため、定期的に全館の害虫駆除を行っているのですが・・・
    アイツはしぶとい。)
 そのお怒りは静まることがないようでしたので、客室に謝りに。

 いました。いました。
 見事、グラスをふせての捕獲。
 すごい技と感心しながらも、お客様の「ごめんで済むなら警察いらん」と言うどこか
で聞いたような言葉に、疲れがピークでちょっとキレ気味の私。
 (ごめんなさい。若女将だって人間です。)
 「お客様にご迷惑をかけたこのにっくきゴキブリを退治させていただきます。」
とまるでサイコロを振るおぎん(ご存じ?)のように、お客様を見据えて左手でサッと
グラスを外し、右のこの素手でな・なんと押し虫!
 ハエ叩きやスリッパなら経験済みですが、いくらなんでも生では・・・
 (たぶん世の女性の中の5本の指に入るのでは・・・)
 そんなことは言ってられないのが私たちの仕事。
 心の中ではワンワン泣きながらも、平静を装い、
 「ご心配なら私、一晩中見張らせていただきますので、どうかお許し下さい。」と
言ってしまうのでした。


     続いて、話題も豊富なE若女将登場

  オロナインH軟膏って?

 年間を通して何回も足を運んでくださる某社長さん。
 ある日、廊下ですれ違った時に、おもむろに私の手を握り
 「なんや、えらいガサガサやなぁ」と一言。
 そしてキャッと頬を赤らめる間もなく、
 「手荒れにはオロナインH軟膏やなぁ。」と言いながら、私の真っ直ぐに伸ばした4本の指を
ご自分の口にパクリ!
 しばしそのまま、呆然と社長さんの顔を見つめていた私でした。
 げーっ!いくら白魚の指と名高い(?)この指でも、さすがに口には入れないでよ。
 今でもあの生あたたか〜い感触忘れません。オヨヨヨヨ・・・


  こんなのもあり?ですか・・・

 まだまだいらっしゃいます一風変わったお客様・・・。
 エレベーターで5階まで行こうと「閉」のボタンを押したところに、滑り込みで乗ってこられた
男性のお客様。
 私の身長よりはるかに小さい方でした。
 「何階までご利用ですか?」とお尋ねしたところ、「2階」とのお答え。
 二人きりの時間はわずか1階分でしたが、そのお客様、降り際にスルッと私の後ろ髪を
下から上へとひと撫で!
 お客様の視界には私のうなじしかなかったのでしょうか。
 残り3階分、人差し指を立て目が点になったままの私でした。

 絶対、ぜぇーったい、こんな事しちゃダメダメ!


     ここらでちょっとブレイク。
    このラブリーな(自分たちで言うなって)若女将たちを支えてくれている従業員もどうして、どうして。
     なかなかお茶目な人揃いなんですよ。「マイク編」2本続けてどうぞ。   

  その1

 やむを得ず館内放送をかける際、「私、声が大きいから」と心配した女性従業員に
「マイク離して喋ったら」とアドバイス。
 すると彼女何を思ったか、(電話みたいに)クルクル巻いたコードが目一杯伸び切る
まで機械から離れ、おまけに爪先立ちで、これでもかという具合に「く」の字に腰を曲げ、
明るい声で「お知らせいたします。」と始まっちゃった。
 機械からはしっかり離れていましたが、マイクとお口はピッタンコでした。

  その2

 今度は男性。本日は消防訓練。
 訓練とはいえ、ストップウオッチを手にした消防隊員が厳しくチェツクしているとあれば、
マイクを預かり火災発生を知らせる従業員は緊張するもの。
 その気持ちは十分理解できるのですが、なにも四角いマイクを耳にあてたまま大声で
叫び続けなくっても・・・。
 電話じゃないんだから。
 きっと隊員の後ろで見守っていたみーんなが「早く誰か教えてあげて」と思っていたに
違いありません。