7年目の米作り 酒造り「女将」   R2.4.13~12.8


 輝かしいオリンピックイヤー、2020年を迎えた2月後半から影響が出始めたコロナウイルス。
 この頃、あわら温泉は新年会や総会の時期を迎え、「女将」も順調に販売していました。
 中国武漢でのことも、横浜の豪華客船のことも遠い場所での話ととらえ、医療が充実している日本のこと、
やがて終息に向かうのではと高を括っていました。
 3月に入り予約のキャンセルが頻繁に入るようになり旅館によっては数百から数千といったキャンセル
状況となってきました。
 恐ろしい有様です。
 4月7日に政府の「緊急事態宣言」を受け、その日から5月6日までの1か月間の自粛要請に従い、あわら
温泉の各旅館も休館の措置をとりました。
 生活は一変。宿泊客0、収入0。飲食ダメ、三密厳禁。
 歓送迎会のシーズンを全く営業できない状況は、旅館に様々な影響を及ぼしました。
 食材、飲み物、売店の商品などの在庫の山、山、山。
 そう「女将」も・・です。

   
   

 4月13日(月)に役員で緊急会議を設け、今後の販売について検討しました。
  1.「あわら温泉を訪れてしか飲めない買えない」という当初からのコンセプトを一時的に撤廃
  2.販売価格の変更(8月末日まで 限定3000本)
    720mlを2000円税別にて、酒販可能旅館にて販売
    発送も可能(着払い対応)
  3.通信販売、ふるさと納税返礼品として取り扱えるようにする

 4月22日(水)に再び例会を開き(今年の総会は持ち回り)、ゴールデンウィークに向けて「宅飲み」や
ネット飲み会に間に合うよう4月27日(月)にマスコミやSNSにて発信することとしました。
 宅配用には女将の会からの手紙と活動QRコード付きのチラシを同封。
 28日(火)久保田酒造さんにお願いして梱包の講習会も設けました。
 各自旅館に戻れば慣れない梱包発送作業。
 テレビや新聞で見聞きした方が旅館を訪れて買い求めてくださったり、電話をいただいたり・・
 必ず応援の言葉をいただきました。

 5月2日(土)に会長が、各旅館で医療従事者の方々へ感謝の気持ちを形にしたらと提案。
 グランディア芳泉の客室を利用したハート形のライトアップが話題になっており、その輪を広げようと
なりました。
 休館中のべにや女将が中心になり、園芸用支柱を利用して製作しました。
 各旅館の玄関や歓迎看板を利用して青色のハートや「ガンバロー」の文字、客室の明かりで「心」や
ハート形。
 届け・・私たちの気持ち!温かな光で呼びかけます。
 
        

 まだまだ客足が戻らない状況の中、今年の田植えは無理と考えていた私たち。
 ですが、今までサポートしてくれた坂井農林総合事務所の助言・・「田植えは生産活動。責められる
理由はない」を受け、この歩みを止めるべきではないと思うようになってきました。
 私たちが田植えした酒米が私たちのお酒にならなくてもいい・・
 「女将」の圃場に行って、田植えをしよう・・

 6年目のお酒の在庫3000本のうち、2000本が8月末までに完売できれば「女将」の酒造りを9月に
考えてみたいと蔵元から約束をもらっていました。

 5月26日(火) 田植え
 女将6人と若女将3人の参加です。
 圃場は屋外だし、密は避けようと心掛けましたが、当日はSNSで発信しようと30名ほどが集まる盛況ぶり
でした。
 直植えはやめ、田植え機に2人づつ乗り込んでの作業としました。
 しかし・・田植え機が・・空回り・・
 急遽修理をしてもらい、30分ほど遅れることに・・。
 初体験の女将は「左右に揺れてまっすぐ進むのが難しい」と言いながらも、交代しながら30アールの
田植えを行いました。
 県の休業要請が7日で解除された翌日ということもあってか、みな笑顔で晴れやかな気持ちであふれ
ていました。
 「田植えをして本当に良かった」心から思えました。

         

 5月22日にはあわら市より提案され準備していたふるさと納税の返礼品を開始しました。
 「ふるぽ」などの専用サイトで、8000円の寄付で甘口辛口どちらかを1本発送。
 全国の方々にお届けすることができるようになりました。

 7月よりふくいdeお泊りキャンペーン、「感幸あわら」県民宿泊キャンペーン、GOTOトラベルキャンペーン
と矢継ぎ早に観光振興策が開始され、本当に忙しく旅館の営業をさせていただいていました。 

  
           

 10月8日(木) 稲刈り
 7年目にして初めての雨。季節外れの台風10号が近づいていました。
 午前8時の決定を受けて中止となりました。
 「でも私圃場を見てこようと思う」と伝えると「私も行くよ」「娘も連れていくよ」と賛同してくれ、女将3人と
娘2人が集まりました。
 剣岳は冷たい雨。
 しかし剣岳ファームの岡崎さんや坂井農林事務所の竹下さんたちも待っていてくれ、試し刈りしておいた
稲の束を広げ、今年の実り具合を説明してくれました。
 心なしか雨が小降りになったようで、形だけでもと準備しておいた横断幕で画像だけでも撮ろうと圃場に
繰り出しました。
 雨に濡れて、たわわに実った稲はますます頭を垂れていました。
 7月の長雨にもよく耐え、よくここまで育ってくれました。

 「稲刈りできなくてもほっこりしよう」美松旅館にオープンしたばかりの「茶楽かぐや」で一服。

 翌日9日に刈り取り、ここからパールライスで精米され、久保田酒造でさっそく仕込みに入ります。
 GOTOトラベルキャンペーンのおかげで「女将」も心配することなく在庫が残り少なくなり、甘口辛口とも
1タンクずつ仕込むことになりました。

 
       

 11月4日(水) 初添え 切り返し 盛り
 女将4人が久保田酒造で作業にあたりました。

 10月1日からは地域共通クーポンが配布されることとなり、おみやげとして「女将」を買い求める方が
激増。
 在庫に悩むどころか、早く造らないと間に合わない状況となってしまいました。
 「早く仕込んで早く造って」の意向もありましたが、すべて醪の発酵次第なんですよね・・。
 初添えの済んだタンクをのぞき込むと、やはりいつも通りなんです。
 フツフツ・・フツフツ・・
 ゆっくりお酒になってねと声をかけて作業を終えます。

 
        

 11月27日(金) 上槽
 女将3人、若女将1人が辛口の初搾りに立ち会いました。
 アルコール度数18%の黄金色の原酒がタンクに注がれてきます。
 蔵元が原酒を掬い、口に含んで味わい、私たちは言葉を待ちます。

 「去年より辛い。キレがいい。華やかで甘い優しい香りがする。含み香の方が立ち香よりシャープです。
 飲み終わりに味がないということはキレがいいということ。食中酒によく、口がさっぱりします。
 甘さ、渋味は時間とともになくなり、ひと月後あたりが一番おいしくなる」
と講評をいただきました。

 私たちも香りを確かめ、口に含み、今年も「女将」が出来上がった喜びをかみしめます。

  
         

12月8日(火) お披露目会
 女将4人、若女将2人とお手伝いの女将や娘で賑やかに。
 毎年セントピアでお客様やお世話になった方をお招きしてお披露目していましたが、今年は旅館会館で
マスコミの皆さんのみお集まりいただきご披露しました。
 甘口辛口1000本ずつ合計2000本の新酒ができました。
 例年通り一年の米作り酒造りを振り返り、蔵元に総合的な講評をもらって報告させていただきました。
 今年は甘口が桃のような香りでお薦めとのこと。
 いつもなら試飲していただき、乾杯をするところですが、今年は持ち帰っていただきました。
 マスコミの皆さんには素敵な記事やニュースにしていただき感謝しかありません。

 実は毎年どんなふうに設えて、この子たち(「女将」)を世に送り出そうかと考えあぐねています。
 いつも市内のミナミ園芸さんにお花を活けてもらっているのですが、毎回なんの打ち合わせをしなくても
素敵にハマります。
 「今年は鬼滅の刃でいこう」と思ったのが直前だったにもかかわらず、当日のお花が竹林を思わせる作品。
本当に今年らしい設えで発表することができました。

 また1年を通して「ヒロちゃんが行く!ふくい食巡り」のヒロちゃんと行動を共にさせていただきました。
 福井銀行さんが福井の美味しい食材を紹介するコミュニティです。

 
       

 令和2年12月18日(金)令和2年度北陸農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として女将の会
の活動を選んでいただき、選定証授与式に参加させていただきました。

 順調に販売していた「女将」ですが、12月17日の緊急事態宣言を受けてGOTOトラベルキャンペーン
が12月28日より2月8日まで停止することになり、その後も延長となりました。
 こんなにイレギュラーな年はない・・何度口にしたことか・・
 国の施策発表で、自分のすべきことがやっとわかるとは・・また今年もか・・
 ふくいdeお得キャンペーンはおかげさまで3月末まで継続となりました。
 ですが、どれだけの福井県民の方々に来ていただけるか‥。

 北陸新幹線の敦賀開業も11月に1年半延期されることを発表しました。
 その後1年に短縮されたと思えば、再度ひび割れが確認されるなど工期の延期は免れません。
 コロナのワクチン問題も前途多難。
 良い材料がなかなか見つかりません。
 ですが私たちは腐ることなく、あわら温泉の未来を信じ、歩んでいくしかありません。
 4月末のゴールデンウイークには「べにや」さんが新装オープンします。
 期待でいっぱいです。

 「若女将ね・・赤ちゃんができたの」笑顔で報告してくれる女将がいます。
 こんな幸せなことを積み上げて、あわら温泉をつないでいきたいと思います。 

 改めて7年目の米作り、酒造りに係ってくださった多くの方に感謝申し上げます。